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環境破壊の現場を見、その再生にQMが活躍している姿を見たことは非常に喜ばしい事だった。私はホッとして島を離れた。ハムディはその後盛んに自分たちの組織を認めてくれるように私に話していた。彼は平静を装い、私の訪問は全くプライベートであなたは関係のない話だけれどもなどといちいち言っていたが、結局私に自分の組織をあまり攻撃しないよう(ガルーダが一連の貨物船騒動の仕掛け人だということは全く立証されていないし、彼も否定していたにもかかわらずにもである)訴えていたことのではないかということはさっしがつく。彼は
「環境保護の活動はインドネシアでは複雑でしかも当局は非常に誤解しています」
ということを何度も話していた。しかし私は何度も自分はプライベートであるからという話ししかしなかった。
「諸川は、ハムディたちとは仲は悪いのかい?あんまり話はしなかったみたいだけど」
「いいも悪いもありません。彼とは同じ組織の人間だというだけです。しかも彼には彼のやり方があるみたい」
「彼のやり方に不満でもあるのか?見る限りは彼は一生懸命にみえるけど・・・」
「彼のやり方では、何にも解決しないんです」
「へええ、えらくまた・・・でも彼もわりかし過激なことをやっているみたいじゃないか。KMTの貨物船襲撃したりさ」
「貨物船襲撃はガルーダが犯人と決まってませんよ」
「じゃあ無人島のQMと飛行艇はなんなんだい?だいたいなんで俺にあれを見せた?ガルーダが犯人と言いたかったんだろう?」
「あれは事実を見せたかっただけ」
「なんだかやけにカリカリしてるな?どうしたの?」
「そうですか?」
「まあいいや。プライベートだ、こみいった話はもうやめた。だんだん訳がわからなくなる。しかし、あんまり面白いプライベートじゃなかったなあ」
「もう、私が主任にお見せしようと思ったものはお見せしました。あとは・・・」
「他にもいろいろとお見せできるとは思いますが」
案内人が口をはさむ。
「けっこうだよ。もうたくさんだ。もう帰って眠りたいよ」
「明日帰りますか?ビル氏の所有しているリゾートアイランドに案内するようになっていましたが」
「もう本当に何もないだろうね?」
「ええ」
案内人と諸川二人が口をそろえていった。
「あとは2日ほどゆっくり島で休んだらいいじゃないですか。諸川さんと二人で」
「・・・・・・。それは、いいかもね・・・」
「ダイビングはどうですか?ガイドの人が教えてくれますよ。私はちょっとだけできるから、一緒に潜りましょう」
「そうだね。まあ、でも本当に何にもないんだろうね?もう疲れるのはイヤだぞ」
「何にもありませんよ、本当に!!」
うーん。どうも雰囲気がないし、気分も乗らない・・・。諸川がもっと普通の子ならいいのに・・・・。そう思いながらコテージに帰った。
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次の日の朝、ではなく昼ごろ私は起きた。今日は何にもなかったようだ。案内人はいなくて、私が起きてから来てくれるということだった。諸川は早朝から釣りをしていたのだという。どうもそこらが基本的にオジンくさくて彼女の魅力というものが感じられないのだが、彼女はうれしそうに「大漁でした」と言った。そしてそれを刺身と煮付けににしていてくれた。
「昼間から豪勢だね」
私は彼女の釣ってきた南海の良くわからない魚の刺身と煮付けを食べ、ご飯をおかわりした。ここらへんは、いかにも休日っぽいかもしれない。
「休日っぽいでしょー」
「そうだね。綺麗な子が給仕してくれるしね。煮物もグロテスクさをのぞけば、美味しいよ」
「父は刺身と煮物が好きだったから、一生懸命習ったんです、母から」
「ふーん。いやいや美味いもんだ。ありがとう」
諸川は二人で話をする時よく父や母の話をした。一般的に女の子はけっこう親父の影響はあるのかもしれないが、彼女はいろいろな事情があることもあってか、いつも父親の話をする。それはものすごくうれしそうな顔だった。
「さて、いよいよ今日は本格的な休日がとれるわけだ」
「もう少しで案内人の方も来ます」
案内人が程なく来てビル氏の所有するリゾートアイランドはプライベートアイランドではなくかなり大きな島で(もちろん今までの無人島と比べてだが)、大勢の人がビーチで海水浴をしているようなところであった。しかし大きなホテルなどはなく、私たちが寝泊りしたようなコテージ風の建物が建っている。日本人はいないようだった。周りは外人、後で話を聞くとみなアメリカ人だということだった。やはりリゾート地は各国で分かれているらしい。私たちはあまりその雰囲気に似つかわしくない小さな船で海岸を通り過ぎ、小さな建物に向かった。管理事務所ということだった。
「こんにちは。よくいらっしゃいました」
建物に入るとビル氏がいた。待っていてくれたそうである。
「ここはアメリカ人ばかりだそうですね。インドネシアにアメリカ人がこんなに多くいるなんて信じられないなあ。どうやってこんな風にしたんです?インドネシアにアメリカ人が大勢いるなんて」
「いえいえ、今日は特別の日だからたまたまアメリカの人が多いというだけです。普段はここはアジアの方々が多くいます」
「特別な日?」
「まあ、慰安旅行とでもいうのか、私の友人知人や親父の友人達を招待しているのですよ。私は自分の土地を提供しているだけの話です。親父のコネクションは自分の営業に役に立てないとね」
「旅行なんですか?」
「あなたは今日はゆっくり休みたいのでしょう?旅行ですよ。そのかわり私の知人も大勢いる、それだけの話です」
なにか含みのある言い方だが、聞かないことにした
「お二人には思い切ってプライベートアイランドを提供しようと思ったんだが、諸川さんがそれではいやだと言ったんでね」
「なんだいそりゃ」
「まあ2日間はゆっくりしてください。ダイビングがしたいということだったんでインストラクターをつけました。彼女はダイバー歴も長いから優しく教えてくれますよ」
ビルの横には綺麗な女の人がいた。
「そうですか、よろしくお願いします。私はダイビングなど一度もしたことがないのでたのみますよ」
「妻は信頼していいと思います」
「妻?ビル氏の奥様ですか?」
「ええ、そうです」
「いやこれは。失礼しました。あなたのような綺麗な方に教えてもらえるなんて光栄です」
「ははは。今頃お世辞言ってもダメですよ。じゃあ頼むよ」
「よろしくお願いします。我妻さん」
ビルもそうだが、ビルの奥さんも流暢な日本語を話す。ダイビングなどといったら翻訳機をはずさなければならないので、英語のできない私にはありがたかった。ビル氏もそこを気遣ってくれたのか。
ビル氏は出て行った。諸川とは一言も話さなかった。
「じゃあ、基礎訓練に行くからプールに行きましょうか?霞澄美も久しぶりじゃないの?基礎をやった方がいいわね」
「そうですね。私もいきます」
「諸川は奥さんも知っているの?」
「ええ」
「彼女は中学生の頃から知っているわ。日本で痛ましい事件があった時から・・・」
「そうなんですか。まあ、それならいいですね。えーっと、行きましょうか」
痛ましい事件とは、もちろん『正義の月の闘争』のことだろう。どうも話しが湿っぽくなってしまう。私は努めて暗い話はしないように心がけた。諸川の方も別にそれを気にしている様子もなかったが。
大きなプールに向かった。これもビル氏の所有物で、自分が一人で使っているということだった。ビル氏の奥さん、諸川、私は各々水着に着替えてでっかいプールでぽちゃぽちゃと練習をする。奥さんは外人にしてもかなり胸が大きくて、ビキニ姿に圧倒されてしまった。それが水中でぽちゃぽちゃやるたびに揺れるわけだから、ここに来て初めて私は最高に幸せな気分になった。一方諸川はというと・・・。奥さんがでっかすぎるのか、ちょっと一緒にいるのがかわいそうなくらいだった。
「やっぱり私奥さんと一緒やだなー。一人で潜ってればよかった!わたしBカップなんですよー」
さすがに場の空気を読んだのか、諸川はそんなことを何回も言っていた。いや、そんなことは言わない方がよかったと思う。でも諸川は諸川でけっこう、というかかなり(貧乳を除けば)きれいだった。
「3人なんだから別にいいでしょ。はいはい早く潜って!」
2時間ほど練習して、すぐにダイビングスポットに向かった。ビーチからそれなりに離れたところで、私は少し不安になったが奥さんが
「怖くなったら私に掴ればいいのよ」
そういってくれたので・・・いっぺんに不安は吹き飛んだ!諸川はさすがにむっとした顔をしていた。
海の中は、幻想的だった。
私は学生時代からとにかく山ばかり行っていて、海の光景というのは初めて、もちろんダイビング自体初めてなので余計にそう感じるのかもしれないが、山の荘厳さではない、神秘的な世界がそこにはあった。それは私の目の前に確かに広がっているものであって、それでいてひどく現実ではないように思える。餌付けで寄ってくる魚を見ると現実に戻るから、私はすぐに餌付けをやめて目の前に広がる幻想空間だけを見ようとした。漂う気持ち、ゆっくりと海底に向かっていくことはますます自分が違う世界に向かっていくことへの不思議さがあった。
本当は、私は奥さんにしっかり掴っていてはたから見ると情けないものだったのだろうが、私は全く一人の世界にいるようだった。
やがて、奥さんは、諸川に私を持っているように指示した。諸川はひとしきり魚の餌付けに夢中になったり、私とは全く違う方向に行ったり、水中写真を撮ったりと楽しそうにしていたが、私の横に来て手をとって珊瑚のテーブルに誘った。
こうなると海の幻想風景ではなく、諸川がいることに集中してしまう。まったく女というのは、せせこましくて現実主義である。しかし諸川の手につながれて泳いでいるというのも悪い感じはしない。青い海は光が中にさしこんで諸川の肌を、ことさら白く見せていた。白い肌が触れていると、その柔らかさの感触は私をひどく切ない気持ちにさせた。彼女はそんな感情を抱かなかったろうか?それはわからないが、諸川は、一人では結局何もできずじまいの私を強引に引っ張って海中を散歩した。
あっという間の時間だったように思える。しかし、上がってみると私たちは2時間ばかり潜っていたらしい。体のほうは、海から上がるとどっと疲れが出てきた。私たち3人は、それでも幸せな気分になって、今夜泊まる予定のコテージへと向かった。
「せっかく海の幻想的な風景を楽しんでいたというのに。全く諸川は・・・」
「だってあんまり退屈してきたんだもの」
「我妻さんは恥ずかしかったのよね」
「いやいや、まあよかったけどね。美女二人に囲まれて。でもせっかくあんないい風景だったのに。もっとゆっくりと見ておきたかったよ」
「十分見てたじゃないですか。私は主任がどうかしちゃったのかと思って心配しましたよ。幽霊みたいにぷかぷか浮いてるんだもの」
「女にはわからんよ。お前ずっと何かしてばっかりだったろう」
「だって・・・」
「二人は仲がいいのね」
「ええ、うん、そうかなあ?そうでもないような気がしますけど。こいつにはけっこう苦労させられてますよ。全部秘密主義なもんでね」
「我妻さんは大切な人はいるんですか?」
ここで突然奥さんがそのテの話をしてきた。私は、言っちゃあ悪いが学生時代もあまりもてたことがない。彼女はいたが、KMT志望によくいる、エリート意識ばかりある鼻持ちならない女だった。同じ会社に入社できたのに、私はすぐに別れてしまった。その後は営業でこってりしぼられる毎日だったから女のことなど考える余裕などなかった。
「いや、いませんねえ」
「そう、霞澄美ちゃんなんかはどう?彼女は一人になって随分経つみたいよ」
「そうやって昔から私に変な人ばかり押し付けてきたんですよ」
「あら、いつも自分から何もできないから助けてあげてたんじゃないの」
「へええ、諸川のそんな話は全く聞かないから、是非聞きたいもんですね」
「イヤですよ。散々だったんですから」
「ははは。まあまあ。いい人もいるよ。そのうち俺もお前がかわいくなるから待っててよ」
「今はかわいくないの?」
「だってお前、苦労してるんだぞお前には」
「そのうちすごくいい部下になりますよ!」
二人とも、穏やかで、打ち解けた雰囲気のままコテージに戻った。私は疲れて夕飯を食べてからすぐに寝てしまった。諸川は、その後どこかに出かけていたみたいだが、私はいろいろなことを考えるのは止めた。休日を楽しんでいたかったから。
2日間の休日の後、私と諸川はKMTの宿舎に帰った。