生月のキリシタン
〜伝承編〜

仏壇と祭壇の並ぶ情景(芸文堂-生月史稿より)
ガスパル樣
ガスパル様(西玄可)

 生月山田郷を治め医術に長じた人物であったと思われる。西玄可とその妻ウルスラは籠手田氏が生月を去った後の生月島の島民の相談相手となり庭内に祭壇を設け教書・祭具を有し宣教師の代理として洗礼を与え福音を解いていた。藩主鎮信は彼の地位や人格をよく知っており度重なる転宗要求を出したが全く受け入れようとしなかった。しかし慶長14年(1609年)西玄可は捕らえられた。『私を救わんとならば、天守のために私の生命を断たれよ。貴下が私に賜る恩恵、それは私に賜る恩恵それは速やかに私を殉教の火磔に就かしむこと意外にはござらぬ。』と叫んだ。しかしそれは叶えられず1月14日暁方黒瀬の辻にて斬首された。妻とその2人の子はその日のうちに捕らえられた。役人が『玄可殿は遠島になり申した』というと妻は『夫の遠島先はパライゾ、パライゾでございます。妾達もパライゾにお送り下さい。』と叫びこれまた斬首された。

だんじく様(納戸神の)
だんじく様(弥一兵衛)

だんじく様(弥一兵衛)
 ジゴクの 弥一兵衛とその妻マリア・子のジュワンは弾圧の激しかった生月を逃れ五島に渡ろうとして生月島南西部の断崖の下のダンジクの森に身を潜めた。しかしジュワンが海岸に出て遊んでいる所を海上から役人に発見され一家全員斬首された。そのため必ず海上から拝みには行かず山道を伝って参拝をした。
 しばた山居間は涙の谷であるやナ 先は助かる道であろうやナ
(今は涙の谷であろうとも先では必ず助かる道が開けるであろう)

中江島

 平戸島と生月島の中間に浮かぶ小さな岩礁である中江島はサンジュワン様と称し洗礼の際に用いる水等はこの島より持ってこられる。この島は数々の切支丹達が命を落とした殉教地として生月・平戸の隠れキリシタン最大の聖地であった。

中江島の主な殉教者

 阪元左衛門・出口才吉(ドミアン)・毛利孫左衛門(パウロ)・塚本惣次郎(パウロ)・伊藤又作(ジョアン)

川窪庫兵衛
(ヨハキム)

『自分が十字架で死んでもなお天国に行くことができないならばそれは自分の罪業が重いからだ。』

雪浦次郎右衛門(ジョアン) 『此所から天国は遠くない』(レオンパゼス429貢)
一ノ瀬金四郎
(ガブリエル)
『切支丹の教えは時が来れば再び広がるであろう』
そしてこの家族の者達も後に中江島等で殉教していく。
生月殉教遺跡群
その他の生月の殉教遺跡
お屋敷山(森部落) 千人松(舘浦) 幸四郎山(サンパブロ−様) 焼山(教会跡) アントウ様(山田部落) 八体様(舘浦) しろさま(殉教した切支丹の墓の事)
納戸神
御前様(聖画・聖像等) お水(中江島の聖水) お札(ロザリヨの木札) おテンペンシア(縄の鞭) おまぶり(十字型の紙片) たもと神(原形のロザリヨ)
おテンペンシア(芸文堂-生月史稿より)
役職
おじさま 洗礼等を司る最高の権威者。長老がお水役となり必ず杖をついて歩いていたと言う。
お番役 納戸神を司る家の主人。オラショを必ず覚え戒律にふくした者でなければならない。
み弟子(組親) 各キリシタンはコンパイヤという信者のグループによって構成されており、そのコンパイヤのお札を預かる宿をみ弟子または組親といった。

オラショ

1.神寄せの呼び歌

 おかたじけなくも、御前様の御前に申し上げ仕ります。サンミギリ様、サンジュアン様、四、五のアンジュアン様、天地も御信頼なさる御一体様、御三ケ所の御前様、オーエの御母サンタマリア様、御前の御子ヒーリヨ様、パウロ様、アント−様、ジョチン様、メンチョロ様、サンタカ−マリア様、トーのマダジメント様、さきのおやしき様、御前様、ごぞびよう様、デウス、パーテロ、ヒーリヨウ、スピリト、スピリト、サントウの、三つのベリサウナ。ひとつのススタンショウの、お力をもってはじめたてまつる。われらがデウスサンタクロの、おんしるしを、もって、われらがてきを、のがせたまへや。デウス、パイテロ、ヒーリヨウ、スペリト、サントの御名をもって頼み奉る。

2.自分のとがばらい

3.オラツンヤ

4.ウラウラ

5.パーテル・ノステル

 天にまします我等が御親も皆も立ちとまひ給いて身をきたへたまふ 天に於いても思召し儘なる如く、内に於いてもまわらせ給へや 我等が日々の御養ひ今日我等に与え給へ 我等は人に許しますごとく我等が科も許し給へ 我等がてびとさんに話し給ふ事中も我等が旧悪より逃し給へ

6.アベ マリア

7.クレド

8.サルベ・レジナ

9.十のマンダメント

10.サンタエケレンジアのマンダアメント

11.根本七悪

12.サンタエキレンジアのサカラメント

13.慈悲の諸作

14.ベナンベンワランナ

15.ミジリメン

16.御体まき

17.キリア

18.イメテ

19.十五下り

20.敬て

21.十一ヶ条

22.パライゾ

サンジュワン様の歌

サンジュワン様の歌(中江島の情景)

1.前は泉水、後ろは高き岩なるやナ 前もうしろも汐であかするやナ

2.この春は桜花かや、散るぢるやナ 又来る時は蕾開くる花であるぞやナ

3.参ろうや参ろうやパライゾの寺に参ろうやナ パライゾは寺と申すやナ 広い寺とは申すやナ 広い狭いはわが胸にあるぞやナ


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