「1995年の悪夢」

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1995.03.15 20:35 ハワイ諸島近辺 (日本標準時)

 濃い雲の中、2機の戦闘機が、黒い物体を高速で追っている。
 その黒い物体は、追いかけている戦闘機よりも一回り大きい。

『攻撃許可はまだでないのか!
 このままじゃ、引き離されちまう!!』

 黒い物体は、全速力で飛行する戦闘機を徐々に引き離している。

 雲で隠れて、物体の全体が見えない。
 しかし、今確認できる事は、それが戦闘機ではないという事だ。

 ――ようやく雲を抜けると、黒い物体の前進が確認出来た。

『――鳥?』

 左右に1対の大きな翼を持った、真っ黒な鳥……。
 見ているうちに、鳥というよりも翼竜の様に思えてくる。

『攻撃許可は!?』

『許可が下りた……。
 目標、UNKNOWN! 何としても墜とせよ!』

 ターゲットは1匹……。
 2機でかかれば墜とせるはずだ。

 2機のうちの1機が、機関銃を放ちながら接近する。

 50m……40m……30m……20m……

『……発射!』

 機体底部に取り付けられたミサイルが発射された。
 至近距離で撃たれたミサイルは、すぐにターゲットに命中し、
 爆炎が立ち昇る。

『どうだ!?』

 レーダーを見た。
 だが、反応はまだ消えてはいなかった。

『エド、右だ!!』

 不意に愛称を呼ばれて、右を向く。

 ――爆炎の中から、黒い鳥は巨大な口を開いてエドの機体に接近する。

 だが、右を向いたときには既に彼は……。

 ――巨大な黒い鳥は、操縦席を噛み砕いた。

『エド……』

 ……キャノピーを食われた。
 その光景を目の当たりにした彼は、彼の絶命を否定できない。

 直後、上空から、黒い鳥がやってきた。
 1匹や2匹ではない。
 大群だ!

 黒い鳥の群れは、瞬時に彼の機体を破壊し、西の空へと向かっていった。



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 彼が気づくと、天井のある清潔な場所のベッドに、横たわっていた。

 『……わたし、は……

  まだ……い、きて、いるの……か……?』


 ジョン・H・ミッシェル少尉は、生きていた。



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1995.03.16 05:45 東京 (日本標準時)

 夜明けとともに、悪夢が始まった。

 夜が明けているというのに、空は黒く、
 道という道すべてが、真っ黒に塗りつぶされていた。

 その黒は、うごめいていた。

 その黒は、うねっていた。

 その黒は、生きていた。

 そしてその黒は、ある一点に向かっていた。

 黒いモノ達が向かう場所には、赤いものがそびえたっている。
 その赤いものは、人の姿を形どっていて、
 その周囲にはまるで人形のような人間達が怯えていた。

 赤いものは歩き出す。

 10数メートル……建物で言うならば、3〜4階程度の大きさの赤い人型。
 だが、その赤い人型は巨大な強さを内に秘めていた。

 しばらく歩くと、空を見上げ、そして空へと飛翔した。
 向かう先は空の黒。
 赤いものは、左手で、虚空を切るようにそれらをなぎ払った。
 するとその先には光の膜が現れ、黒いモノを次々と焼き尽くしてゆく。

 空に元の光が戻ると、今度は大地の黒いモノを睨んだ。
 赤いものは猛スピードで降下し、右手で虚空を切った。
 すると、赤いものの右手には光の束が現れて、
 その光の束で次々と大地の黒いモノを切り裂いてゆく。

 赤いものが、すべての黒を消し去るには、21時間47分を費やした。
 すべての黒を焼き尽くし、斬り尽くした時には、
 東京は、廃墟になった。
 残った建造物は東京タワー……それを残してすべてが瓦礫になった。

 果たして、赤いものは、人を守るものなのか?



 50年経った現在、この3日間に起きた事を記録した映像は、現存しない。


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