#4:炎神
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人通りもない夜の街を少年と少女が疾走していた。
夏季標準学生服の少年と、さらさらの長い黒髪をなびかせる少女。
「はぁっ……はぁっ……」
少女――水島 桜は息を荒くしている。
「はぁっ、はぁっ……大丈夫か?」
「い、いきなり召集だから……き、緊張しちゃって……」
――昨日の夕方俺と戦ってたのは何処のどいつだよ……。
二人が目指すのは株式会社ジョンの日本支社ビル――従業員出入り口。
そこから行ける場所には、メテオブレイカー直通の地下列車がある。
本来メテオブレイカーは、
メテオの卵が孵化する約6時間前に放出されるエネルギー波を感知し、
覚醒までの間に作戦を立て、ガイア兵器を出撃させる。
だが今回は、既にメテオが活動しているとの報が康二に伝えられた。
突然の非常召集のため、時間に余裕がない。
「水島さん、コッチだ!」
康二の脳裏には以前フランスで確認された新種のメテオの姿が浮かぶ――。
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作戦司令室――。
『データベースからの解析結果、モビルインセクトです!』
「やはり、日本にも……」
西川康一は唇を噛んだ。
以前フランスで確認されたこの『モビルインセクト』は、
虫型メテオでありながら空中を高速で移動し、
通常のメテオよりも強固な殻を纏っている。
『ガーネシア、シヴァの出撃準備完了。
あとはオペレーターを待つだけです』
「彼らは?」
『たった今、地下鉄に乗ったようです』
「そこからここまでにあと15分と、機体搭乗に10分……」
『……大佐?』
「到着し次第、直接機体へ搭乗するように言ってくれ」
『了解しました』
「それと……」
『……?』
「苦戦するかもしれない、あの子の出撃準備……させてくれ」
『えっ、しかし!』
「責任とるのは俺だ……時間がない、急げ」
『……了解!』
指示を出し終えた康一の背後に白衣の女が近寄る。
彼女の名は、川崎真琴。
ガイア研究から得た技術を、現代技術で再現するスペシャリストであり、
ガイアの心臓部。『グロラリフエンジン』のシステム解析を成功させた人間だ。
かつて康一と同じメテオブレイカー養成学校のガイア研究科に在籍していた。
「出撃させるの?」
「ああ、とりあえず釈放だ」
「米国支部が黙っちゃいないわよ?」
「コッチはやっと3機目をもらえたんだ……
なのにガーネとシヴァの2機でやれと言うほうが馬鹿げている」
「このあと私米国支部に出張なのに……」
「まぁ、司令官は俺だ……責任は取るさ」
「……」
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康二と桜が本部のホームに到着したちょうどその時、二人への指示放送が流れた。
『ガーネシア、並びにシヴァのオペレーターは、
直接格納庫へ向かってください。繰り返します……』
「どういうこと? 作戦会議とかは?」
桜が慌てて康二に尋ねる。
「かなりピンチなんだろ? ホラ、急ぐぞ!」
康二は桜の手を引いて走り始めた。
ここから各々の機体に乗り込むには、
ホームを出てすぐのエレベーターに乗り、地下9階に向かい、
更衣室で着替えた後に初めて格納庫での機体乗り込みが許可される。
二人はエレベーターの乗り、呼吸を整える。
「……」
「……」
康二の表情が険しくなる。
「……」
「……」
……沈黙。
「……」
「……」
桜はそっと、康二の顔を覗き込んだ。
「……あの」
「……なんだよ」
「なんか……聞いてたプロセスと違うんだけど、こういうのって、よくあるの?」
「滅多にない……他の国でもね」
「異常……なんだ」
康二は深呼吸をすると、険しい表情のまま彼女に解説を始めた。
「過去のメテオの胎動、覚醒データから、作戦開始の5〜6時間前には、
なんとか作戦組んだりできるはずなんだけど……。
……この前の3月の終わりにフランスに出て来たモビルインセクトってやつが現れてから、
こういう事態も想定しろってEGから言われるようになった……。」
「……いーじー?」
「アースガーディアン……シヴァ・ラディウスがいるココの上層組織。
つ〜か、水島さんそこから来たんだろ?」
「……あ、略語」
桜がつぶやいたあと、康二はため息をついた。
――昨日戦ったヤツとは思えねぇ……。
おそらく初めての実戦で、自分の乗るガーネシアと互角に戦えたシヴァ。
そのオペレーターが、今隣にいるこの娘だと思うと、
康二は己の自尊心を突付かれているようで、面白くなかった。
「私、ちゃんとやれるかな……」
「……昨日俺とアレだけやっといて何言ってるんだ」
「……」
――その言い方、ちょっと下品。
桜が心中でそうつぶやいていても、康二が知る良しもなく、険しい表情のままだ。
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二人は戦闘服に着替え、技術スタッフに簡単な説明を聞いた後、
颯爽とそれぞれの機体に乗り込み、各コントロールパネルを操作し、
機体のシステムを立ち上げてゆく。
そして二人のオペレーターは目を覆うヘッドギアを装着し、耳元のスイッチを操作する。
<G-04/jp Ghanecia>
<G-03/jp-k Siva>
機体名が表示された。
Geo
Ancient
Intentional
Arms...
Machine-Condition
GAIA-matrix:online
F.A.D.system:online
Neuro-Sensor:onlone
Ion-Sensor:Online
Manmade-Muscle:Normal
System-Seal:OK 52%
Unknown 48%
機体のコンディションに異常はない。
<Prese-voice-control>
「操者、ル・グルディスキュ・ゼラ・ラディウス……
ガーネシア、スタンバイモード」
「操者、水島 桜……
シヴァ、スタンバイモード」
2機ともスタンバイモードになったちょうどその時、
作戦司令室からの通信が入電した。
ヘッドギアのディスプレイに、
Voice-Massage
・KANAMORI-KANA
という表示がされる。
『これから作戦内容を伝達します』
カナモリカナ軍曹の声が、ヘッドギアを通して二人の耳に送られる。
『作戦エリアは旧東京、新宿。
敵の数は不明。
通常の虫型メテオも確認されています』
「通常の!?」
『先ほど確認されました……通常の数十倍の覚醒スピードです』
「生け捕りにしろとか言わないでくださいよ……」
『捕獲命令はありません。
また複数体のモビルインセクトが確認されています。
夜間の為視界が悪いので、視界を
有視界モードから赤外線視モードに画面を切り替えてください。
こちらでもサーチライトを用意しますが、おそらく目標の速さに対応しきれません。
複数体を相手にせず、両機体で各個撃破を心がけるようにお願いします。
また、苦戦が予想されます。作戦開始からおよそ7分後に増援を送ります。
なにか質問は?』
「カナさん、増援って……まさか?」
『ええ、イフリートよ』
『い、イフリート?』
『呼び戻したそうよ』
『イフリート……?』
「……解りました」
『じゃ、頑張って』
軍曹の声と文字表示が途絶えた時、機体はそれぞれシャドウウィンドに収容された。
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旧東京――。
かつての首都も、今や瓦礫の山。
新宿と呼ばれたこの街も、1995年のメテオ襲来時に多くの卵がばら撒かれた為、
人が生活するのには危険な場所となっている。
そして、ガーネシアにとっても、この場所は因縁の場所でもある。
ガーネシアの元になったガイアの像は、この地より現れたからだ。
『目的地点に到達……
現在確認されているメテオの数は3体。
いづれも通常の虫型ですが、
他にも潜伏している可能性があります。注意してください!』
「――!」
『――!』
『機体、切り離します!』
暗闇が覆う空から、2体の巨人が舞い降りる――。
「スタンバイモード解除……いくぜぇぇぇぇぇッ!」
康二の視界には2体のメテオ。
ガーネシアは左腕ウェポンプラットホームからP.B.Sをせり出させ、
それを右手に装備し、その2体に向かってスラスターを吹かす。
『着地ッ……バランサー、パラメーター正常値、
え〜っと、目標確認、2体!』
シヴァは康二が狙うメテオに対し、イレイズガンで先制攻撃をしかけた。
イレイズガンの弾はメテオの装甲を徐々に削り取り、2体の動きを食い止める。
「――きりさけぇぇぇぇぇ!」
ガーネシアは2体同時の撃破を狙う。
光の線が弧を描くように2体の目標に刻まれる。
――キゥォォォォォ!!
シヴァはすかさず踵のキャタピラを駆動させ、
イレイズガンを連射しながら目標へ接近する。
『目に……目に当たって!!』
距離が近づくにつれ命中精度が上がり、
目標の目の近くに強力な回転する弾丸が飛んで行く。
――早く、倒さなきゃ!!
そう思う桜の背後から、もう1体のメテオが忍び寄る。
『シヴァの背後に反応! 避けてください!!』
「――水島!!」
シヴァの背後に忍び寄るメテオへ、上空からガーネシアが飛び掛る。
「このぉぉぉぉぉあ!」
目標に接近し、P.B.Sを一閃。
だが敵は上手く後ろに退けた。
舌打ちのあと、ガーネシアは左大腿部のプラットホームを展開し、
その左手にハンドガンを構える。
「そっちはどうだ!?」
『ちょうど撃破……!』
「じゃぁ索敵頼む、他にも居るはずだ!」
『うん!』
桜の返事と共にガーネシアが再び目標に飛び掛る。
『補助索敵します!』
『戦闘指定区域、ポイントゼロへ!
ガーネシア言ったとおりです。
シヴァはポイントゼロで索敵作業、目標を撃退後、援護へ!』
『了解!』
メテオは邪魔者と判断したものが周囲に接近すると、
電波等を遮断する『粉』を散布する。
なので遠距離からの索敵は可能だが、
接近戦の際、レーダー等の機材が使用不可となり、有視界戦闘を強いられる。
しかし、その打開策として、目標にマーカーとなる信号弾を打ち込む事で、
敵の場所判断が可能になる。
日中ならばその必要は無いが、夜間戦となると暗闇で有視界戦闘は不利となる為、
特に動きの早い敵、迷彩効果が見られる敵には、マーカーを打ち込まなければならない。
赤外線モードとはいえ、熱量を感じられるのは半径25m程の距離に近接しなければ、
目標の熱源を感知できないからである。
『到着しました!』
『マーカーガンを射出します』
シャドウウィンドから金属の塊が、シヴァをめがけて投下される。
シヴァは右手のイレイズガンを地面に置き、マーカーガンをキャッチした。
『……マーカーガン、初期設定……あっ、されてる。
えっと、それじゃぁ、地形データスキャン開始……!』
道路に散らばるガレキから崩壊寸前のビルまで、直径50mの地形データが、
桜のヘッドギアのディスプレイに、簡単な3Dポリゴンと数値で瞬時に表示されてゆく。
『熱源……』
絶えず空中を移動するガーネシアと、
そのターゲットである虫型メテオの位置が真っ先に表示された。
『……』
ガーネシアが虫型メテオを撃破したようだ。
ガーネシアは急いでシヴァに接近してくる。
『……?』
「――水島ッ、走れ!」
康二の声を聞いてすぐ、背後から衝撃がやってきた。
シヴァはその衝撃で転倒し、その真上を大きな影が飛んで行く。
「――クソがぁッ!!」
ガーネシアはスラスターを激しく吹かし、その影の持ち主を追いかけて行く。
『まさかアレが?』
「ああ……モビルインセクトだ!」
黒い巨大なカブトムシのような――。
それを見たものならば、そう説明するだろう。
黒い甲殻の下のクリアイエローの4枚の羽。
一つ目のすぐ上にある大きな角。
そして昆虫全般のような6本の脚が、カブトムシを連想させる。
ガーネシアの全速力をも引き離しかねないその移動速度は、
MB日本支部にとって、モビルインセクトの未知なる力を感じさせるに足りた。
「まだだ、コイツは3匹で行動する習性がある……
――コイツをマークしたら索敵を続けてくれ!!」
通例であった目標の『情報』を必死で思い出しながら、
康二は諦めずにモビルインセクトを追い駆ける。
『う、うん!』
桜は返事の後、シヴァを立ち上がらせ、
マーカーガンの銃口をモビルインセクトに向けて構えた。
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球状の物体の中。
辺りはいくつものディスプレイが表示され、
数値やらグラフやらがいくつも流れている。
「……」
――静かな呼吸。
球体の中心には小柄な女性がたたずむ。
全身は黒いタイトな戦闘服。
両手にはコード類が露出しているグローブ。
球体の中心部に存在する彼女だが、
彼女と球体を連結している部分は存在しない。
物理的に不可能な事であるが、
彼女は間違いなく、球の中心で浮いている。
正面の大型ディスプレイ一杯に、
<SOUND-ONRY>の文字が表示される。
『私だ』
西川康一の声が球体に響いた。
「大佐……お久しぶりです」
『今回の働きによっては君への監視を解除できるだろう』
「そのつもりです」
『相変わらず強気だね……
モビルインセクトは空中戦対応だが、
君ならやれるな……?』
「はい……!」
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シヴァの頭上を飛ぶ3体のモビルインセクト。
空中ではガーネシアが3体を相手にP.B.Sとハンドガンを頼りに応戦している。
『全目標、マーク完了、
目標の座標データ転送します!』
康二、桜のヘッドギアに送られる戦闘指定区域のデータ。
その中に、モビルインセクト3体の位置情報が追加された。
「それっ――」
空中からガーネシアが急降下し、先ほどシヴァが放置したイレイズガンを装備する。
「――借りるぞ!」
ヘッドギアに文字列が走る。
ガーネシアとシヴァは兄弟機であり、
手持ち装備の武装の共有が可能である。
「目標の左右から挟み撃ち!
――いいなッ!!」
『――うん!』
両機は散開する。
「3ッ!」
ガーネシアは空中から。
『2ぃ!!』
シヴァは走る。
『「いちぃぃぃぃぃっ!」』
3体もの目標がいたが、
両機は同じターゲットにイレイズガンを放った。
――しかし。
目標の殻が、激しく発光していた。
『……なに!?』
「嘘だろ……!」
グロラリフの光……だった。
緑色の光の膜が、モビルインセクトの殻を覆う。
それはまぎれもなく、
ガーネシアと同じ力……グロラリフであった。
『ば、バリア!?
アレって、破れる? 割れる?』
「……できるだけ近接戦闘で、
コッチも中和しつつ攻撃しないと……ダメージを与えられない!」
『康二君、走って!』
シャドウウィンドからの通信の直後、
頭上からモビルインセクトのソニックキャノンが降ってきた。
「――あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙っ゙!」
康二は自棄になったような声を発し、
ガーネシアをすかさず前進させ、イレイズガンを捨て、P.B.Sを装備し展開する。
「上ッ、シヴァにランサーを落として!!」
『りょ、了解ッ!』
「その機体、グロラリフ出せるよな?」
シャドウウィンドから巨大な槍が、シヴァの目の前に突き刺さる。
『装甲とか武器の表面にくらいなら……』
シヴァはイレイズガンを放置し、その槍を装備した。
「やり方は?」
ガーネシアはハンドガンを太腿背面のプラットホームに格納する。
『知ってる!』
両機は武器を構える。
『目標、Aから各個撃破!』
そして、目標に向かってスラスターを吹かし、飛び掛る。
ガーネシア、シヴァの胸部から、徐々に緑色の光の膜が機体を覆い、
ガーネシアがP.B.Sで目標の前足を切り裂いた。
目標は痛みのあまり開口し、
直後、シヴァはランサーを目標の口に向かって突き刺した。
シヴァの装甲を汚す黄色い液体。
そしてガーネシアが目を狙い再び斬る。
ンギギギギギギギギギギギギギギギギッ……
深夜の冷蔵庫の音をそのまま大きく耳障りにスケールアップしたかのような音と共に、
夜空が緑色に染まる。
モビルインセクトは黄色い液体をばら撒きながら、
全身の力を徐々に失っていく。
『――西川君!』
ガーネシアの背後に2体のモビルインセクトが忍び寄り、
大きく振りかぶった前足をガーネシアにぶつける。
直撃を受けて前足を失ったメテオと共にガーネシアは落下する。
「ぐあぁぁぁぁぁっ!」
『西川君ッ!!』
桜の動揺をモビルインセクトは見逃さなかった。
散開し、シヴァに挟み撃ちを仕掛ける。
「マシンカノン!」
落下しながらもガーネシアは一方の目標に弾丸を発射させる。
マシンカノンの弾丸は命中し、被弾した目標の軌道がずれる。
そのチャンスを見逃さず、
シヴァはランサーでもう一方のモビルインセクトを薙ぎ払った。
「……くそっ、出力が!」
グロラリフが発光するまでに展開させると、
グロラリフエンジンの出力は、著しく低下する。
『ガーネシアのグロラリフエンジン、出力が大幅に低下しています!』
『早く離脱してパワーをチャージして!』
ガーネシアはなんとか体勢を立て直し、離脱を試みた。
「スピード出ねぇ……」
『西川君!』
ブレながら飛行するガーネシアを見て、シヴァは追い駆ける。
――キグヲァァァァァァァァァ!!!!
モビルインセクトは開口した。
『――エネルギー反応確認! ソニックキャノンです!!』
『――西川君ッ!!』
メテオの口から放たれる音波の槍――ソニックキャノン。
触れた物体を原子レベルまで揺さぶり、物質崩壊へと導くメテオの切り札。
それがガーネシアに放たれた。
「――!!」
諦めた……。
出力低下したグロラリフエンジンのままでは、
機体の軌道を変える事は難しい。
少年は勝つ事を諦めた。
『――康二、そのまま前進して』
「!?」
突如、ガイア兵器以上ある大きさの巨大な弾丸が、
ガーネシアとソニックキャノンを隔てた。
『……あれ、なに?』
砂となって崩壊してゆく巨大な弾丸の中から、
新たな"神"が現れた。
巨大な戦斧を両手で構え、
バイザーから覗く輝く眼光がメテオを睨むその姿――。
「い、イフリート……」
【G-03/jp イフリート】
『二人とも、退避して……!!』
声と共にソニックキャノンを放った目標に飛び掛り、
装備している戦斧でそれを真っ二つに切り裂いた。
断面には炎が灯る。
『……』
『すごい……』
感嘆の言葉が桜の口から漏れる。
グロラリフを展開しながらでもダメージを与えがたいモビルインセクトを、
イフリートは瞬時に切り裂いたのだ。
「――水島、避けろ!!」
その性能にあっけにとられるあまり、
シヴァの背後に別のモビルインセクトが忍び寄っていた。
『――!!』
イフリートは戦斧の長い柄でシヴァを無理やり退かし、
メテオに迫った。
『きゃぁぁぁぁぁ!!』
『……ごめんなさい』
イフリートのオペレーターは小声で詫びると、
メテオを十字に斬った。
メテオの黄色い血を全身に浴びながら、
イフリートは最後の敵に照準を合わせる。
目標は空――上空。
『――康二、目標を私の頭上に固定させて』
「来て早々人遣いが――!!」
ガーネシアのグロラリフエンジンの出力は正常値に戻っていた。
それを確認するとガーネシアは、
イフリートの上空で滞空するメテオに飛び掛りホールドした。
「やったぜ、サッサと決めろ!!」
廃ビルを蹴りながら、
イフリートは上空へと飛んだ。
ガーネシアはそれを見てメテオをイフリートめがけて投げつける。
『――!!』
イフリートが目標を切り裂いた。
空中に火の玉が突如現れ、
その火の玉は二つに割れ、
そして、地上に落ちた。
『……シャドウウィンド、
敵の反応はありますか?』
『……すべて、消失しました。』
『そうですか、
ありがとうございます……』
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帰還後、康二と桜は、イフリートのオペレーター紹介のため、
ブリーフィングルームに招集された。
ブリーフィングルームに、向かう途中、
桜は康二に絶え間なく話しかけ続けていた。
「イフリートはすごいね」とか、「どうして今まで出撃させられなかったのか」とか、
「どうしたらあんな動きができるのか」とか、「斧がかっこいい」とか。
康二は生返事をするだけで、桜の質問には答えなかった。
ただ、怒り肩、勇み足でブリーフィングルームに向かって歩いていた。
「乗ってる人……女の子だよね?
あのさ、ホラ、あの〜、声が…若かったし……」
「あぁ、そうだよ……」
「コドモのオペレーターって、
てっきり私たち二人だけかと思ってた、
ほ、他にも、いたんだね〜」
「あぁ……そうだ……」
「……」
いくら話しかけても康二は生返事の繰り返し。
話題が尽きた桜は、康二の背を睨んで膨れっ面をした。
「水島、どうした?」
康二が膨れっ面の桜に言った。
「えっ?」
「ついたぞ?」
「あ、あ、うん!」
桜は顔を赤くしながら、二人そろってブリーフィングルームに入室した。
「……おぞいぞ、二人とも」
この部屋で待っていたのは、西川康一と、金髪ショートヘアの少女。
「すみません」
むっとした表情で康二が謝る。
「じゃ、まず桜ちゃんに自己紹介して」
「ハイ」
康一の指示に応えたのは、先ほどの少女であった。
「大森 舞。
イフリートの専属オペレーター兼、技術開発部所属です。
……聞きたい事があったら、遠慮なく言って下さい」
「ギ、ギジュツ・カイハツ……部?」
青い瞳、金色の髪。
かつ、東洋人の骨格の、ちょっと背の低い女の子であった。
「彼女はガーネシアのフレキシブルエアードライブシステムの設計や、
シヴァのイレイズガンなどの開発に関わっていたんだ」
「……」
康一のフォローにも無反応。
舞はただ、冷めた青い目で桜を見ている。
「……あの、斧のロボットの人、ですよね?」
桜の脳裏に、戦斧で退けられたことが過ぎった。
「はい。
さっきはごめんなさい、
あんな形でしか助けられなくて……」
「イッ、いえ、こ、こちらこそッ
ありがとう、ございますッ……」
脳裏に浮かんだことを謝罪されて、桜は反射的に返礼をしてしまう。
「大佐……自己紹介だったら俺は来なくていいんじゃないですか?」
しどろもどろする桜を横目に、康二は康一に喧嘩腰の口調で言った。
「……オマエにもちゃんと用はあるさ」
康二は康一を見た。
目が合ったのを確認して、康一は軽く深呼吸をし、
そして、ゆっくりとした口調でこう言った。
「今年の12月27日、
康二……オマエはオーストラリアに異動になった」
「――はぁッ!?」
突然すぎる康一の発言に、康二は声を荒げる。
そして桜も思わず康一を凝視する。
「……ホントですか?
西川大佐……?」
その発言に半信半疑な桜が、康一に確認した。
「……本当さ」
「何で!?」
「……向こうでなら、お前は生き残る事ができる」
「……!!」
康一の康二の会話に、
桜はついてゆけないようだった。
そんな桜を見て、舞はこう言った。
「……メテオの卵は、
早くて来年までにすべて覚醒する計算です。
元々、
ガイア兵器を動かす為だけに作られた人造人間の康二は……」
舞の言葉に続けて、康二は言った。
「――用が無くなったら廃棄される」
一瞬にして、その場が沈黙した。
「……悪いな、この事黙ってて」
桜の息が震えた。
「大佐は、
康二に生き残ってもらう為に、異動させる事にしたの。
オーストラリア支部は、
アースガーディアンに対して大きな発言力を持っているわ。
康二を廃棄させない事はできるの」
康一は目を閉じて言った。
「……康二。
みんなと、居たいか?」
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