何も見ずして見えるもの
寒々しく
重くて恐ろしく速い
結局僕等は「理」に支配されているが
進化、革命を望む心を「理」によって与えられる、そうゆう時が常に用意されているのだ
その時のためにも常時我々は幻想に忠実でなければならない
下らない技巧に塗れた現代の価値観などを捨てて
純粋な真実を求める価値観を信じようよ
それは僕1人でできることでもない
世界がそれを信じぬ限り、世界はいよいよ無味乾燥に生気を失っていく
理論まがいの浅はかな「傲慢」を信仰することは
僕の屍を慰める諦めの気持ちよりも罪深く、滑稽で、無意味である。
僕の基地は大気圏をぬけてそれこそ遠くまで拡がっています
遥か高い高い観測基地の門から僕に良く似たご先祖様が出てきたんです
なんてね、実はそれも僕自身の端書に過ぎないことにはとっくに気付いていました
敢えて言うなら自分自身すぎる、それは僕で在り過ぎるってことです
現実の僕は僕でしかないのに、それはあまりに雄大で、率直すぎる
その眼が澄み切っていて直視できるような代物ではないことは解っていましたが
改めて畏敬の念を持ちました
だからと言って彼の眼が僕の姿を数段階上の位置から飲み込むのはやはり恐ろしくて
それでも僕の見るという行為は彼の認識の中で儚げに役を演じるに過ぎませんでした
僕は彼に「僕も一緒に連れて行ってください」と懇願しました
彼は遠い言語で何かを囁き、僕を視ることも無く通り過ぎて、世界は拡がっていきます
今、この瞬間も世界は生まれ、拡がっているのです
僕には4次元の判断しかくだせないんですから、それは「新陳代謝」なのでしょう
「飛び越えることはできない。其処には果てしない階段があり、それを昇り終えて自分の姿をその瞳に映せ」
彼は僕にそう諭していたような気もします
彼の眼と顔は幾らか疲弊していたけれど、今の僕と何も変わって無いように見えました
僕も彼も遥かなる被害者なのだから
そして僕は彼に遠く及ばない
真実の愛は諦めと懇願の心を餌にして生き続ける
僕は想像したい
この上ない夏の日差しを体に受けながら
冷たく澄んだ泉の中に静かに沈んでいく
水面の光が小さくなっていくのを見つめながら
静かに沈んでいく、そんな夏の日を
そんな最期の夏の日を
人間が有限であり無知であるからこそ芸術に心動かされる
僕の意識の中で世界が円滑に廻らないのであれば
僕の人生の中に世界は必要ないのである
人の心が常に移り変わり永久の幸福が見出せないとして
妥協と自己矛盾の海の中で生きるのが嫌なのだとしたら
理論的に残された、たった一つの真実は自殺である
ただ、自殺よりも死んだ生活のほうが心を惹きつけるから人は生きるのである
時の流れは「目的」に到達できるのか
そもそも、そんな座標軸と「目的」は無縁のものなのか
それすらも解らない
そしてそれを解る必要性すら与えてくれない
強欲は無意味なものだ
無欲は無いにしても、強欲は必至ではない
強欲は醜く軽蔑すべきもので
強欲は世界に苦しみの要素をふんだんに運んでくれるとともに
世界を非常につまらないものにしてくれる
結局、生物は道具なのだ
道具に理性を与えたら苦しいのは当たり前だ
このようにしてこの世界は間違っている
だが世界は在るのだから間違ってはいないということになる
我々の認識が間違っているのである
つまり我々が苦しむから間違ってるということにはならず
我々が苦しむのも「ちゃんと」計算のうちなのだ
我々が苦しむのも美しい旋律の音符の一つなのだ
結局哲学は科学には勝てない
どうして自分の顔を客観的に視ることができないのだろうか
一種の防衛本能のようなものだろうか
モーツァルトにはまっています
基本的に落ち着いた曲が多いですね
音楽の中から「不快」と「恐怖」を取り除いたような曲づくりだ
幸せな生活に憧れているうちが一番幸せな気がするわけで
だったら人は死ぬまで妄想し続けるのが最も幸福なのだろうか
実際この世界はそのようにして廻っているわけで
妄想する余地を全て取り払ってしまうことが最も恐ろしき拷問であろうか
何かの拍子に頭が裏返る、そんな人達が過去の偉人の中にいたように思いますが
裏返った世界を見たいとは思いませんか
裏返っても人は死にますがね
あの時殺しておけば良かったと、
池袋駅構内のドトールで不意にそう想った
目の前に立っているスーツ姿の中年男を見ながら
《そういえば足から根が生えてやがる…どうりで…》
なんて自信たっぷりに眠りこけていた
どうしようもないな、俺。
そんな考えがしつこい油汚れのように染み付いて離れない
頑張れ、俺。
如何わしい自己欺瞞の心労を先送りですか。宜しいことですね。
と聡明な厭世家の目に睨まれ身が竦んだ金曜日。午後。もうすぐ夜
或いは自己分析も枚挙に暇が無い
その悲惨な例を一つ挙げてみようか
そもそも僕という人格及び人生というものは蛙の肺に息を吹き込んで膨らまし
それを明度の低い塗料で彩色して神棚に祀る、そして好奇の眼でそれを眺めるのだ
そのようにして僕の自尊心は人工的な美しさを備えながらその内部に生き生きとした生命を宿すことになる
先程もコンビニの前で暖かい肉まんを頬張りながら胸一杯の悲しみに耐えていたが
そのような一瞬一瞬を正確に積み上げていったものが僕の人生であり認識なのである
もう何度も言ったことだがそれは行為で無く結果であり、しかもそれは過去の結果に限定される
至って怠惰で無内容でありもしない芳香を放っている。線香のような匂いだ。
池袋構内のドトールで珈琲の飲んでいるとき不意に両手を振りかざして大きく息を吸い込んだ
そして目の前に立っている男の呆れるほどの透明さに僕の自尊心は悪循環的、トラウマ的に膨張するのだ
それが「今日」だ。そして明日、そう、それは全く以ってそうなんだ。
僕が最近心配してるのは自分が気が狂ったように熱に浮かされて人を殴り殺したり
痛みに耐えながら冷たい水を飲んだり、覗き込むような馴れ馴れしい視線に憎しみを覚えたり
苛々するような偽善の囁きに狼狽して机を蹴り上げたり、体に悪い嗜好品だけを好んで食べても
それが一見充実した喜びを与えてくれるように想われても
実際は中身の無いスカスカの徒労を自分から選んでいるだけ
それは気付いるけど「魅力的だ」と自分を偽わるこの愛しい芸術的でさえある自己欺瞞だ
悩みB「玄関の開く音と一緒に薄汚れてギトギトした妬みの心が僕の心を侵食するんです」
「救われたいかい?」僕は、彼は?僕と彼が?僕だけ?救う?何を?いや意外にそうかも…
いやちょっと待って!!!!何もそんな急に!!!!僕は馬鹿じゃないよ?解ってる。此処で間違うと大変な
ことになるんだ…(疑)。。。(こいつ誰だ…)よぅし、解った。細部までじっくりと話を聞こうじゃないか
その時の僕の顔はこの上無く自身に満ち溢れていたかもしれないし、青ざめて引きつっていたかもしれない
「僕は救われなくていいけど、その代わり彼も救わないで下さい」
僕はそんな声を浅い眠りの中で聴いたような気がして思わず眼を覚ました
ムシャクシャする胸と頭を掻き毟って冷たい氷水を飲み干して壁を殴りつけて何かに勝ったつもりでいると
そんなことは解っているけれど自分はもうそれ無しではいられないと痛感してるからじゃないのか!!!!!!
ドロドロした黒い重油を毛筆で溶かすようにじっくりと物思いに耽りながら酔いしれながらトーストを頬張る
想念を選り分けようとはしないで敢えてその混沌の中に身を置くこの快感、その依存心に苛まれる猜疑心
紅茶に映る像をよく視れば「貴方の顔」大好きな君の顔、僕の顔左にずらせば君の顔もう一度
自分の躯など無く腐った新宿の街に浮遊しながら配線に垂れ下がっているのは僕か?
腐った新宿の街と僕の意識がヴヴヴ貴方の視線が素敵で…君の…僕の顔と君の顔の両方が?
散歩に出よう!散歩に出ようと顔の筋肉が弛緩した老人が小刻みに震えながら囁いたのを眺めていると
心臓にセメントを塗りこまれるような不快な気分に襲われ僕はゆっくりと眼を覚ました。またしてももう一度?
(愛と嫉妬を8:1の割合で享受したい〜我侭だって偽りの愛よりはいくらかましだから〜)
(早まった衝動に駆られる日曜日の記録〜抜け出すことも叶わない〜)
11月32日。。疲労が凝り固まってピカピカと光った気がしたら、いつも通り親子喧嘩が始まった
しかし…なんだ……湿気を帯びた篭るような罵声が習慣宜しく(視てる?)足を踏み鳴らしてやがる(視てない)
いい加減にしやがれ、いい加減にしやがれ、とは言わぬものの…気違いのような抵抗をしてみようか?と!
虚しいだけだし辞めておこう。苦い樹の根をそっと齧る僕。心が寒いです。呼吸が苦しい。アァ…イマニモ…
最近は逃げ口上だけでは(虚脱感と絶望感と喪失感から)逃げきることはできないって密かに気付いています
・クリーム色の古本と螺旋ネジが置いてある書斎の机
・(実験1)天才の脳幹を細かく擂り潰したものを3分割して試験管に入れておく
・(実験2)凡人の一生を秒刻みで細かく記録したものを三種類の異なった状況でもう一度再現する
・(実験3)戦争中に拷問されて殺されていった人々の苦痛をできる限り正確に想像する
・(実験4)失われた反物質の大半を自分の生活とは別次元の話だと実感し持続させる
《以上の全てを認識の軌跡に頼りつつ狂気の中で大事に温めてやってください》
僕意外の誰がやってもそれは変わらない。所謂僕の満足感の所以だけのためです
僕は失敗しましたが。悔しい気持ちと嬉しい気持ちが8:1で表示されています
涙腺から悲哀と怨恨の雫が流れ出て、透き通った風が自分の肉体まで透明にしてくれるような瞬間があります
そして又すぐに僕は様々な表情をした人の群れに囲まれて悲痛な執着の念に染まってしまう、そんなリピート地獄。
永遠の愛を与えてください。客観的な耳と眼は邪魔でしかないんです。僕には愛の丈夫な部分だけ与えてください
永遠の愛を与えてください。僕はそんな切実な願いを夢に託して、涙を流します。あらゆる夢は力になり得ます。
悲しい涙と悔しい涙。どちらが強くて、より崇高で、時の流れに耐えうるものなのでしょうか…
鋭いナイフと鋭い犬歯で野獣の脊髄を背骨もろとも叩き切る力と恨みの念が
体中の関節を逆側に圧し折って嘲笑う誇らしいその融資を
自分の中の欲望を捻じ伏せる程の凄まじい憎悪と憤怒の化身となりし我が身を
大地に飛び散った溢れる程の血潮を舐め回す真紅の舌と生命を握りつぶす鉄のような拳が
地獄の苦しみを超越した禍々しい瞳から放たれるのは邪気に満ち満ちた怨念の塊り
体中の急所という急所に打ち込まれる鉛の爪は威圧と傲慢でギラギラと深淵の呻きを俺が
殺意を迸らせて自分を押さえつける、この大地が!!!!!!!!!
漲るような自責の念で我を揺るがす、この大地が!!!!!!!!!
そこにあるのが
だが俺を屈服させるに至らないのは!!!!!!
そして俺は大地を掌で昇圧して、どこまでもどこまでも高みへ
たかが地獄とその炎は俺の憎しみと支配欲を遮るため轟々と轟々と忌々しくも俺が
これが馬鹿な、これが馬鹿なと、まざまざと見せつけたもうたか!!!!!!!!
ゾゾゾゾゾゾゾと強欲な我の前に翻しは弱弱しき栄光の光か?
鼻で笑ってお前の首根っこを圧し折ってやるつもりでいるのだ、悪魔の憎悪でお前を圧死させるのだ
忘却した自我に忌々しい輝きを与える牙で大地に激しく噛み付くのだ
我が息絶え血に染まるその時まで力強く大地に噛み付くのだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
真実の愛を囁く一介の猿
愛は力であると一匹の猿が仄めかした
そしてもう一匹の猿が力は愛であると嘯いた
僕は猿が大嫌いだ。握力が250KGあるから人間なんて一たまりも無い
ところで力は愛だ
それも意志の力だ
意志弱き者に真の愛はありえない
だが真実の愛はあらゆる者に平等に与えられて然りでR
そのようにして神は欠陥品なのでR
そして真実の愛とは無限の愛のことでもある
だが無限の意志の力などありえない、つまり真実の愛など存在しないのだ
人間の意志の力は遠くに光り輝く本物の愛に永久に届きはしない
其処に在るのは真実の愛に「近づこうとしてるもの」であり
その距離は永遠に変わりはしない
だがそれで十分なのだ、私はそれすらも得ることができない自然淘汰されるべき猿なのだ
私はその役割を全うすることになっているのだから
そして私の人生は愛とは又違った場所で止まっている
其処にはあらゆるものを無へと回帰させる悪魔が潜んでおり、一度掴まれると離してはくれない
ねじまき鳥クロニクル読んでた
やはり感動というよりは共感という言葉のほうがしっくりくるわけです
他人事とは思えない、いや他人事であるはずがないのだ
少なくとも自分の中から永遠性が失われるその日までは
「僕」という人生に理不尽に襲い掛かってくる深い絶望と
言いようの無い苦しみが絡みついた確かな希望が自分の中でのた打ち回っているのを感じずにはいられない
それは拷問のようでもあり、恐ろしく幸福な瞬間でもある…
恐らく死ぬまで慈悲深い絶望と容赦無い絶望の間を彷徨い続けるのだろう
そして最期まで絶望の腕に抱かれながら微やかな夢を見るんだ
そうすることだけが僕に残された唯一の人間性なのだから
それにしても何故、今なのだ
僕は流れの存在を想わずにはいられない、想う必要が無いのも知っているけれど
そして僕は精神を切り裂かれるような悔しさに胸を締め付け、頭を押さえこみ
地獄の業火のような激しい復讐の念を抱き体を奮わせるのだ
凡そ解りきったことじゃないか…痛みを実感した「つもり」なんて…
ヤケになってジーパンを破り捨てる妬み深い僕の横に呑気なアゲハチョウが舞っていた
乱暴に手を振り回して蝶を叩き落した…
「フン、、、知ったことじゃないさ!」と庭の樹に向かって吐き捨てたように呟くと
無防備になった20歳の精神に絡みつく冷たい涙の触手。。。。
破り捨てたジーパンが自虐的な悦びを増幅させて黒く落ち着いた
その色はどことなく白っぽい黒、妙に落ち着き払っているように見えた…
遠くに見える信号機の色がコツコツという音に変わっていくのをボンヤリと見ながら
自分の頭をコツコツと叩いて、胸の中の靄靄を絞り出すようにしてエヘヘと笑った
【嫌だよ】
予想外のことだが僕の抱いていた幻想が何らかの形で現実を侵食していく気がした
それは取りとめも無い些細なことから徐々に拡がっていき細胞分裂を繰り返しながら
現実世界の隙間を埋め、繋ぎ合わせてうまい具合に修正してくれるんだと
僕は案外現実の側から始めてソレラを手に入れるよりも寧ろその方法のほうが自然なんだと思った
【でもね】そう言った。それは一見巧妙だけど真実でありすぎるせいで堅い柵に囚われることになるんだ
だけど、そういう殻のようなものが曲がり角に一つずつあるから夢は鮮明に録画されるんじゃないかな…
やっぱりそれは決めるものじゃないと思うよ【聴かれてるね】
ハードカバーの哲学書をパタパタと捲る音に僕の精神の鎹がパチンと嵌る瞬間に
ハッと我に返り僕の人生は80年じゃなく「今」だというような感触を舌の上に感じた
それは一寸した文鎮みたいなものだ、、、僕は文鎮を抱きしめて畳の上に寝転んだ
君の手を握り締めて(それが僕だったのかは覚えてないけど
【裏切り者は案外一番遠くにいるものだよ】
意味ありげに勇者は耳打ちしてきやがった
君にも見せたかったよ(疲労に耐えかねて憎みもしたがね
僕の歌姫は泥沼に沈められて笑い狂っていたな
その光景に快感を覚えてたよ(ところで今はそれどころじゃないんだ
ほっといてくれ、ほっといてくれ、とは言っても構って欲しいんだろ?
蔑むような眼で睨みつけると自分の肘をさすった
僕は水辺に落ちていた卵の殻を拾い集めて元通りにしたよ
それを君に上げる、だからもう少しその泥沼に沈んでいてくれ
思ってた以上に裏切り者の世界は複雑なことが解ってきたよ
この場所から離れれば離れるほど物事はより難解に理解しづらくなるみたいだ
【操り人形の復讐が始まるよ】
それを君は理解しないのか?
やめてくれ、それは僕にとって最大級の【侮辱】なんだから
【結局僕は堕落なんて字句に何の感慨も覚えやしないんだ】
「僕は他人の自己愛は認めないよ!!!!!勿論自分に義務を負わす覚悟はある、、、いや、、どうかな、、。。まぁいいや!!!
僕は君をこの部屋に引きずり込むかもしれない。でも世界なんて何処まで行っても自分の部屋と変わらないだろ?
僕の部屋の壁に君の顔が浮かび上がってから随分経ったけど。。。別に僕は君の部屋に入って笑顔を強要するわけじゃないんだ
僕の部屋には色んな物を持ち込んできたし綺麗に整理してあるよ。僕が死んだら部屋は取り壊されるんだけどね
勿論そうさ!!!!僕が死んだら部屋の壁一面に浮かび上がった顔も全て崩れ落ちるんだよ!!!!それはそうさ!!!!!!!!ヘッ!!!!!」
僕は大抵の人間には殺されないし、僕も殺す気は無い。僕は部屋の隅っこの方で酷く苦い液体を啜り上げているだけさ
一つ気になるのは、ちっちゃい蝉のような物が残り少ない羊水をチューチュー吸ってることくらいかな
まぁそんなものいつでも親指で押し潰してしまえばいいんだけどね。。ハ!!!!!悲しくなんかないさ!!!!!!!!!
僕はまだ眠っているよ!!!!!僕はまだ眠っているんだよ!!!????せいぜい、いい気になってればいいさ!!!!!!!!!!
徐に聞き飽きた耳鳴りと吐き気と寂寥感と艶かしい寂寥感と絨緞の解れに身を預けて僕は呆ける
目の前の時計の針が描く軌跡に目を徐々に慣らせていき、もったりした感覚の中で一つ一つ丁寧に確認していく
何を失くすべきで何を組み込めばいいのか、似つかわしくない部分は削ぎ取られ、より特化された質が嵌め込まれる
電球は申し訳程度に点いている。必要最小限の光は溶媒と架け橋といった意味でも重要な位置を占める。愛しくもある
僕はスッカリ変わってしまうだろうか、デリダの差延宜しく僕の所存が一概には確認できないもどかしさ。エスプレッソの味がする
異質で断続的で流動的で蔓延的、相互関係が亡霊のように彷徨い僕に耳打ちする。熱く抱擁する。瞬間に墓標が立つ。焼きつく。
銀杏並木の下を段階的に滑り落ちながら耳の後ろの辺りに柔らかな違和感を感じる。通学路を遮るバスの中を覗き込むと君の鼻。
見慣れた君の鼻に魅入っていると今まさに自分がバスの中にいることを確信して其処、依り代の隙間にピタッと収まった。
僕の体はザラザラした蝿の大群のような濁流に飲み込まれていった。それでいい。それはもう使命を果たしたから。勿論。。。
シャッターの閉まった売店の前に立ち尽くしていると、胎の底から湧き上がってくるような酷く事務的な声に驚いて危うく失神しそうになった
それでも僕はしっかりと膝に力を入れて外殻の重心を先天的なチャネル(発生するたびに微妙にずれるが)に落ち着かせた
もしこんな風に刻一刻と脅かされ、心を掻き乱され、重苦しい鉛の様な風が体内を巡り心臓をズタズタにしてしまうなら
僕はその手を握り締めて地面に腰まで埋まっていたい。薄暗い小部屋に置かれた、飲みかけの缶珈琲のように
眼が掠れる。瞼が熱を持つ。人差し指と中指で軽く押さえる。ヒンヤリとする。
顎の下辺りに親指を当てて頬の対角線上を顔の中心に向かってなぞる。体の節々が軽く痛む。
アキレス腱がジワジワと熱を持ち鈍い痛みが足の感覚を支配する
吐く息が異様に熱く、舌を焦がす。手の平で塞いだ耳の奥の三半規管に妙な虚脱感を感じる。恐らく何かの養分が足りていない。
蒸し暑い三角形の寝室の中で体の表面積を一番少なくするように蹲っていると
緑色の静寂の中で心臓の鼓動が一際大きく聴こえてくる。こうやって手で顔を覆っていないと振り落とされてしまいそうだ
肋骨の奥の辺りで耐え難い蠢きを感じると体を緊張させ「海底に佇む壷のようなもの」を想像して心を落ち着かせる
さっきよりも格段に熱い息を吐き続けて体がガクガクと震えだす。骨と肉が乖離してしまいそうな感触だ。
そして耐えがたい孤独感が僕を襲う。僕は藁をも掴むような気持ちで目の前のストーブの灯を食入る見つめて
透き通った冷たい涙を流す。それは乾上った僕の頬に瑞々しい慈愛を与え、抱え込んだ膝にポトリと落ちる。
駄目だ…… もう寝よう… まだだ…まだまだ… 心が穴だらけになって手が悴む…今日もまた…
「変わるものもあれば変わらないものもある」映画マトリックスより
僕は変わらない側の世界に住んでいますよ
こちら側からあちら側には干渉できますが、あちら側からこちら側には干渉できないんです
あちら側からこちら側には来れますが、こちら側からあちら側には行くことはできません
それに僕は入り口を間違えました
此処に残って観察を続けるのか、最深部に向かって降りていくのか。そこが問題です
僕は闇を喰べすぎて体内で闇を造りだせるほどになりました
言っておきたいのは、あちら側の闇はこちら側の闇に飲み込まれる程度だということ
僕はこちら側の世界では計算間違いなどしたことありませんから
『1999年(或いは2003年?)夏(或いは冬)入り口は一つしかなくて、出口が幾つあるのか
表面上の悲しみは陽気と隣り合わせ、どっちにしろ検算は最後にするものであるから』
「僕は知っている。捨てること、僕。理解するというよりは知っているということ。そして得る事を望み、
それまでも捨てているのだ等と見苦しい言い訳をしていること。でも権利はあるよね?幾つかの間違いを含みつつ
正しい精神に生きることを望むのは可能だと思う。知っているからこそ間違いの中で安らぐ権利もあるでしょ?」
どっちでも良くなってくるが、聴きたいことは沢山ある。聴くだけで人生が終わってしまうこともある。
それは果たして幸福だろうか。
冷たい磁石のような君の指から砂鉄を払い落として、僕は恭しくホットミルクを差し出したのを覚えている。
人の命は思った以上に短いね、シャープペンシルの芯みたいに急に途切れて無くなってしまうんだね
新鮮な死体に向かって懇切丁寧に諭していたら(こんなことは時間の無駄だ、僕こそ、そのように教えられている
みたいだ)自分の手を握って空から降り注ぐ冷たい粒子が体内を循環した後に温かい熱を持って涙腺から溢れ出した。
何もかも全てお見通しって訳だ…
僕の人生はあの病室のあの夜、あの小さな体の中で、あの小さな電球の灯の下で、不意に終わってしまった。
気付けば夕方、雨戸の閉まった寝室は異様に暗く、重苦しい母親の呻き声とともに刻一刻と終日の闇が近づいていた。
「君の記憶の一部分になれたらいいのに」無数のボルトやらナットやらを詰め込んだ枕に頭をうずめてニヤニヤしている
極度にリラックスした脳内で自分と求める物の境が虚ろになっていき、僕の頭は恍惚と矛盾の極みで微妙に震えだす。
そうすると益々僕は約束を忘れ、前後関係や依存関係、相関関係などを無視して一つ一つを滑稽なほど溺愛しようとする。
もはや罪の意識は消え、僕は自分を縛り付ける鎖を自分を留まらせるための大いなる勘違いと錯覚して
同情までを得ようとしている。布団の隙間に現実が入り込むと、僕はいじける様に寝返りを打ち
ボルト入り枕は僕の脳を優しく包み込んで徐々に溶かしていった。
そのようにして密度の高い夜の闇の中で僕のグジャグジャした思考は
強まったり弱まったりしながら、救いようの無い悲しみの中にあえなく吸い込まれていく。
そんな魅力的な夜だった。
ちっぽけな自殺は煌めきを失って、僕は憎しみの鬼となりますか。
取り返しの付かない憎しみを覚えて、醜い願いを自殺によって払拭しましょうか。
本能は欲望の虜となり自らの感情はエレベーターの鉄壁の中に
深く沈む(節足動物の機動音の様に
沈む、沈む
深く、深く、深く
沈む、沈む、沈む。
野心は風向きに歩幅を合わせ、成長しすぎた竹のように
硬く、粗雑な色をして
土埃にまみれながら深く唸る
唸れば唸るほど僕の殺風景な欲望は
乾き、ささくれ立って、夢を見る
叶わぬ夢を見る。夢の中の砂漠で僕は
乾いた砂は僕の欲望を吸い取り
僕は地団駄踏みながら砂を貪る、畜生、砂を貪る
飲み込んでは吐き出し飲み込んでは吐き出し
ザラザラに爛れた自分の欲望を通して手を伸ばす
醜い自分が醜い笑顔で醜い希望を求めて手を伸ばす
自分が感情に飲まれ
人生が感情に飲まれた時
たった一つの願望が生涯を通して涙を流した
小さい小さい。俺の感情などどうでもいいんです。吸う空気が足りてないのだろうか
他人面して小さい言い訳をしていろ。客観的な偽善面の向こうに小さい意志が燻っているんだ
或る人が。小さい。或る人は。小さい。ある人も。小さい。何もかも。小さいのだ。
悠久の銀河に炙れた残りカスのような人類の灯火なのだ。下僕が。取るに足りない戯曲の前奏で
自分の目が誰かの目を通して屑のような虚像を映し出し、移ろう感情の中で小さく凝り固まっている
俺の感情と僕の感情と私の感情がそれぞれそれぞれそれぞれ、見ろ対極に様々な因果が行儀良く座っている
ある種の力強さがある種の劣等感と共に、ある種の連続性を以って奴等の惨めな誇りを保っているんだろ?
少なくとも小さい力を大きな力で掌握するために血眼になって小さい小さい争いを演じるのさ
ゆっくりゆっくり覗き込むよ。ゆっくりゆっくりゆっくりゆっくり遮ることなく忘れた頃に後ろから刺し殺してやろう
彼だったか。彼女だったか。彼等だったか。小さい小さい自分の中で大きな運命が息を殺して何かを待っている
忘れた頃に俺はやってくる。抽象的な小人の群れが耳慣れない言語で俺に囁いてくる
小人を踏み潰し。擂り潰し。擦り付け。沸いては踏み潰し。踏み潰しては湧いてくる
こんな光景を何処かで見た。生きたのはいつだったか。解ってますよ。悲しみは絶えることなく
解ってますよ。悲しみの大小はどこまでいっても悲しみの中。君も僕も。彼も彼等も。小さい。探す。
小人が石にへばりつく。小人を燃やしているのは誰だろうか。小人を踏み潰して、沸いては小人を
沸いては小人を踏み潰す。解っていますか。小人の声を聴くことなく、小人を踏み潰して悦に浸ります
何処だか解らない遠く遠く全てから離れた遠くの階段の上で、小人が沸いては踏み潰す人生が無限に続くのかもしれません
存在は存在の人生の中にあって転生の過程を通し精神が剥離する
【人間がそれ自身に矛盾する要素を内包することによって】
【必然と存在は同義であり】○○○○○【動物が肉(SHIFT)人間が精神】
【相互補完が観念的に悪意を以って為される以上】
【空間に満ちし因果の種が物質の内に発生し還元していく過程】
存在は存在の人生の中にあって恍惚の表情で苦しみを受容し剥離する
【少しづつ吸い込む。現世の匂いを少しづつ吸い込む】
レ・ミゼラブルを読みダージリンTEAを一口試飲して暫く木のベンチに座り道行く時計達を
眺める。僕の日課だ。デジタル式、アナログ式、真っ直ぐな黒髪が美しい懐中時計もいる。
皆それぞれ規則正しくチクタクと通り過ぎていく。機会の様に正確な息遣いで目的地を目指し
各々の速度で歩いて行く。長針が短針を追い抜く頃、僕の感情は唐突に高まり白銀の懐中時計
が僕に向けて丁寧にお辞儀をする。各々の速度に鑑み目の色も様々に変わる。寧ろ背景が後追いである
僕の感情が静まる頃、時計達は諸々の秒針刻みで横一列に並ぶ。その正確さと瞳の色からして
熱源はもっとずっと遥か下のほうから来ているようだ。背景は寧ろ後追いのようである。
果たして俺は暇なのだろうか。いや暇ではない。やるべきことは沢山ある。
義務。少しの強制。義務に縛られた向上心。恐怖に縛られた向上心。責務も。
死に臨む向上心。死に縛れた暇。やるべきことはある。俺は暇だ。死に臨む暇。
やるべきことは沢山ある。俺は過度に暇だ。いや暇ではない。死に縛られた向上心。
俺は暇である。暇なわけではない。やるべきことが多すぎて、巨大な暇が俺を覆っている。
過度に暇であり、義務の前に跪く向上心と前向きに死に臨む責務。やるべきことがあり
大きな暇が過度に膨れ上がり、義務が死の前に望みやるべきことが沢山ある。俺は暇である
果たして俺は暇だろうか。
いや、俺は暇じゃない。待っている。
何を待っているのかは忘れた。俺にはやるべきことが沢山ある。
俺は天然痘とエボラ出血熱に罹り、新型肺炎に罹り、鳥インフルエンザに罹り
そして生きている。何故かといえば抗体が存在したからだろう。
俺は法則のある世界に生きているのだ。子供の頃に思った、あの気持ちと同じだ
暇である。ピー柿を食べている。「不活性ガス充填包装」…何のことだろうか…
恐らく何かを遅らせるような、そんな響きである。柿の種に比べてピーナッツが多い。
MOZART交響曲第40番ト短調第一楽章。何か手遅れで取り返しのつかないメロディーに聴こえる。
俺は迷路が見える。常に見える。道は1秒おきに変わる。だが俺は自然な足取りで進む。
勿論出口は無いのだ。だが自然に足が進む。見事に物事は流れるのだ。勿論出口はなく方向も無い。
道は一秒おきに変わる。流れは自然で俺が歩を進めれば道も流れる。
何を考えていたのか。それは忘れた。今俺は何を考えているのか。それは解らない。
勿論出口は無く。自然な足取りで道を進む。俺にはやるべきことが沢山ある。
それが何かは忘れた。俺は暇である。俺はやるべきことを肌で感じ。俺は酷く暇である。
何か良い詩でも書きたいと思った
二つの眼で世界の一部を見ているのだから
生きることと詩とは何処か違う気がした
何かを求めて詩を書いて
詩の数だけ
何処かに今も悲しみが眠っている
人間と俺とは関係ない
俺と人間とは関係ない
人間がいても構わない
人間がいなくても構わない
人間を消しても構わない
人間を消さなくても構わない
人間がいるのか解らない
人間がいないのか解らない
人間を滅ぼすのは素敵
人間を救うのも素敵
どうでもいいが何で俺は人間なんだ
人類を知らずして
どうして俺は人間でいられる
自分の感情の速度を他人の感度ランクに共鳴させたり、世界の無機的な外皮を透過して近似的な乗数分だけ自分の琴線に触れさせたり
一時的な反映を齎すだけのあくまで一時的な短気予測に中毒症状を起こして依存するが、極部的な化学反応レベルの肥大化は
あるいは癌細胞の現に立ち昇る陽炎の甘美な作用を現出させ、極部的なシステム末端化を押進める悪魔的な肥大化は上層からも
下層からも忌み嫌われ、外部からも内部からも畏れられ、客体的な相互互換性ループ美的意識変換虚像共鳴遠隔操作システムの
誤作動カオス・バタフライ増殖保存修正機能の作動の内部で有機的ウイルスを繁殖させ、主体的自我の実存レベル潜在意識化適応媒体
探索器官感応系の大部分を欠損させ、交錯次元神経系接続レーザー照射システムの焦点中心エリア内太陽系・ガイア・哺乳類人科専用
溶媒液保存セグメントにて、穏やかで偏愛に満ち少々複雑な自己愛の中ぐっすりと眠る。目を覚ますことは永遠に無いだろう。
今日も散々な一日だった。何処かで自転車の鍵を失くす、テストの出来は芳しくない、昼
に食べたビーフカレーからおが屑の香りが漂ってくるなど、一時代の終わりを感じさせる
のには十分過ぎるほど切ない週明けの幻であった。そこには形而上学的要素など何一つと
して入っておらず、唯々需要と供給の渦の中でメビウスゲームをしているかのような閉塞
感しか存在しない。
切ない霧雨の舞う中、存在が急いで家に帰ってみると案の定玄関の鍵が開け放しになって
いた。
「やれやれ、今日もですかと……庶民には庶民の生活ってもんがあるんですがね…」
凝った首を同じ方向にニ、三度傾けて、壊れかけの炊飯器のような溜息をつく。
こう見えても俺はチャップリンの映画を見たことが無いのだ。
鍵穴を覗き込んでみると、何か超自然的圧力が加えられたような明らかに不自然な拡がり
方をしている。日本狼の仕業で無いことは確かなようだ。彼等は自分達の能力を誇示する
ような真似はしない、例えるなら珈琲の側で斜に構えるミルク男爵のような存在である。
それに彼等のナウな後姿はもう2年近くも見ていない。ま、どうでもいいや。
それから急いで土足のままで二階の自分の部屋まで昇って行き、鬼みたいな形相をしなが
ら頭の中で「ムラカミヨウイチ!!!ムラカミヨウイチ!!!」と何度も繰り返して部屋のドアを乱暴に押し開けた。
外はもう薄暗くなっていたので部屋の電気を付けると、200mほど先の部屋の片隅のほうに
薄茶色をした何かの塊みたいなものが蹲っているのが視界に入る。それが何なのか目を
凝らして見てみようとするが、なにぶん部屋が広すぎるのとその物体の周りに頼りない陽
炎のようなものが漂っているため、ムックが茶色くなったような印象しか受けないのだ。
いや、ムックが茶色いのは当たり前か。ま、いいや。それはそれとして、その物体がゆっ
くりと俺に向かって歩いてきた。
「おいおい、不意打ちかよ。それはフェアじゃないね。そうは思わないかい?」
茶色い物体に向かって溜息混じりに語りかける。キマッた。俺にしては素敵なセリフだ。
明らかにアニメの見すぎのような気がするがそこは気にしない。形から入るのは現代人の
特権である。だが茶色の物体はなおも俺に向かってノロノロと近づいてくる。幾分大きく
なってきているような気がするのは俺が疲れているからだろうか。それに奴の色が徐々に
茶色から緑色に変わってきているのはデジャヴュというやつだろうか。いやデジャヴュは既視感だ
関係ないではないか。落ち着け、俺。こう見えても国語は得意なほうではなか
ったか。何て下らないことを考えてるうちに、とうとう緑色をした「何か」が俺の前で「解
放」した。蛹の皮を破るように陽炎が消滅していき、幾分弛緩気味だった緑色が油粘土の
逆襲の如く或る一定の慣性の元で徐々に結実していった。
それはつい先頃まで僕の弟であったカマキリだった。名を祐樹という。鎌の形状と羽の長
さが幾分変わっているので恐らく今日も進化したのだろう。目だけが人間のままなのだが
その不均衡さのようなものが、自分の体中に嵌め込まれた「理性的ズレ」の存在を疼かせ
る。つまり世界の最も奥深くに設置された無数の秘密の地下室のようなものに何かの拍子
で迷い込んでしまったような、そんな倒錯的不安感である。ある日の夕暮れ、祐樹は何の
前触れも無くマダラカマキリになってしまったのだ。俺が祐樹から視線を外したそのほん
の一瞬の隙にである。夕日が差し込む商店街を2人で歩いていると祐樹が俺に向かって
(最期の)言葉を発した。
「イデオロギーの意味が解らないんだ」
俺が振り返ると祐樹は既にカマキリになっていた。俺は特に驚きはしなかった。俺は常に世界の
不条理性のようなものを右脳の側だけでなく左脳の側にも詰めていたし、現実世界
は眠っていたからだ。ただ祐樹はカマキリというよりは寧ろトノサマバッタになるべきで
はなかったか、と俺は思っている。彼は事あるごとに「殿様になりたい。殿様になりたい。」
と喚いていたし、何よりも祐樹という名前は「バッタのようによくはねる子になりますように」
という願いが込められていたのだ。それがカマキリだなんてあまりにも酷すぎる。
俺は悔しさのあまり自動販売機を蹴り飛ばして女子高生に笑われた。舐めんなよコラ。
そして今、祐樹はカマキリとなって僕の前に立っている。挑戦的な目つきだ。カマキリに
なったものだから少々強気になっているのだろう。確かにレーザー式鎌だなんてちょっと
強そうだ。羨ましくもある。ある種のヒーロー気取りのつもりなんだろう
「まぁ、珈琲でも飲まないか。インスタントしか無いけどね。」
俺はできるだけ冷静に、村上春樹の小説の1シーンを思い浮かべたりしながら言葉を空中
に吐き出した。祐樹(カマキリ)は何も言わずに部屋の中央でカタカタと震動している。部屋中の
空気が祐樹の足元に向かってフルマラソンを始めたような、そんな震動の仕方だった。天
井に視線を向け部屋全体を揺らそうと奮闘しているかのような祐樹の姿を見ていると
まるで強い日差しの中、縁側に転がっている夏ミカンのようだと思い、思わず吹き出してし
まった。それが気に入らなかったのか祐樹は鎌を振り上げると「ンィィァーーー!!!!!」と叫び声を揚
げて東側の壁に体当たりをした。部屋全体が激しく揺れると同時に、隣の山岸さんのお宅
が崩れ去った。なんてパワーだ。ここぞとばかりに山岸さん家族も何処かへ出かけてしま
った。家族サービスなんて何年来のことだろうか。たまには強引な手段も使ってみるもの
だ。山岸さん、いってらっしゃい。祐樹はというと未だに羽を45度の角度に曲げてお辞儀
をしながら震えている。相当怒っていらっしゃるらしい。前はあんなに穏やかな性格だっ
たのに。俺は飲みかけ珈琲をカップごとゴミ箱に捨てて、祐樹の分の珈琲を片手に彼に近づいていった。
「インスタントだけどそれなりに美味いよ。カマキリだって珈琲くらい飲むだろ?」
俺に敵意が無いのが解ったのか、祐樹は幾分落ち着きを取り戻して珈琲に向けて鎌を伸ば
した。鎌を器用に動かして両鎌で珈琲を受け取ると、祐樹は「ァァディィーーーーー――!!!!」と耳が
割れるような鳴き声を発して珈琲を西側の壁に向かって叩きつけた。珈琲が熱すぎたのだ。
そして間髪入れずに壁に向かってホーミング鎌ミサイルを連射する。壁が炎に包まれ、隣
の佐藤さんのお宅が崩れ去った。フセインよりはよっぽど危険だ。まぁ、なんだ、こういうのを地獄絵図っていうんだろうな
と冷静に祐樹を見つめながら俺が懐古趣味に浸って
いると、不意に祐樹の目がチカチカと光りだしてそれきり動かなくなってしまった。
電池が切れたんだな、と俺は思った。高い攻撃力を維持するためにはそれなりのエネルギ
ーが必要なのは当然のことだ。物事には常に代償が伴うものである。なんというか… 。
俺は肩を落としながら祐樹の側に近づき、少しだけ小さくなった祐樹の体を持ち上げた。
「また充電しないとな」
人間とカマキリは似ている部分もあるが思った以上に違う生物であることも最近俺は解っ
てきた。俺はカマキリではないが弟はカマキリになったのだから。ルールという保護膜を
形成し人間として暮らす。だが世界の本質は意外とカマキリなのだ。多くのカマキリの目
から視た世界は矛盾にうまく溶け込んでいる。故に人間は時としてカマキリになるのだろう。
人間の愛は人間的安全の中で生まれる。俺は確かにその範疇の中で祐樹を捉えてきた。
だが祐樹は最初からカマキリになりたかったのかもしれない。そして僕もどちらかという
とカマキリなのだ。僕は様々な価値観が展示された水族館の中で祐樹の姿を見つけるだろ
う。愛を取るか、カマキリを取るか。明日もまたそんなことを考えながら電車に揺られ、
そんなことを考えながら日が沈む。
孤独を極める。精神構造を超越した何かが始点と終点の中間あたりに存在する。
物理的ではなく精神的な孤独を短い人生の中で更なる高みへ
限界的な孤独を前提条件としてどこまでも恐怖だけを凝視し続ける
無の中に精神を安置する。無の中に精神を安置し、無のまま無の中へ回帰する時まで。
あらゆる価値観が俺の前で音を立てて崩れ去る
俺は無表情な顔をして涙を流し、次の価値観を崩しにかかる
大儀という名の幻想に生きるか
本質という名の幻想に生きるか
真実を単純に悟るなどといって
複雑さに救いを求めているのは俺か?
理解不能な域に心を持ち上げようとする役割は
物や知識の対象を外れて
精神の階層を上のレベルへ持ち上げる役割は
人類の進化は個を超え認識を超え
やがては融合し終ぞ知らぬ次元の流浪へと
時代時代に精神の使途は何かを操作する者か
請け負うものか
獄苦が憑いてまわる
獄苦が精神を蝕む代償として何かを魂に宿し
溶質を導く意志に触れる何かを得るのは
苦しみは何かの奔流の中で指針を支える神となる
誰もがわかるべきだ
いつだって何も無い
いつだって心を濁すべきではない
いつだって求めるものは求めぬこと
求めぬ時代がやってくる
いつだって人間は欺くべきではない
いつだって人間は騙すべきではない
自分も他人も
人間は誰もが一つであることを知るべきだ
自己満足の努力にして
自己満足の代償を求めるもの
人間の得るものは一つとしての人類の求めるものへ
|
|