「風雪(ふぶき)、何をやっているんだ?」

少年は、少女に声をかける。
少女は、振り返る。

「お兄様!茨遠(しおん)お兄様ね?」

少女は、よたよたと近づいてくる。
少年は笑う。

「そうだよ、風雪。あ、風雪。それ以上進むと落ちるぞ?」

少年は、少女が落ちないようにつれていこうとする。
少女は、少年の手を触っていった。

「茨遠お兄様は何しに戻ってきたの?」

少年は戸惑う。

「・・もどって・・きてないよ」
「え?お兄様!?」


       シオンの章「悲しさに包まれて」


「茨遠お兄様!茨遠お兄様!どうして?戻ってきてくれないの?」

少女の悲しみ。
少女・風雪の。

「すまない風雪。僕、確かめたいんだ。『冒険』へ、旅立ちたいんだ」

風雪は、涙をこぼす。
少年は笑って

「すぐ、戻るよ?」

といった。
けれども、少女はくびを横に振る。

「駄目・・・・だよ」

少女は、ぽろぽろと、涙をこぼしてゆく。

「だって、音院(いんい)御姉様が・・もうすぐ・・なくなるんじゃないかっていってたわ」

茨遠は、少女を抱き上げる。
そして、少女にいった。

「僕が、音院のそばにて、ここの世界に住む人達が死んでしまうのと、音院のそばにいないで、ここの世界の住む人達が死ななくていいのと・・どっちがいい?風雪」

少女は迷う。
茨遠は笑う。

「戻ってくるよ。すぐ」
「駄目!茨遠お兄様が死んじゃうのは、嫌!魔物と戦うって事は、死ぬかも知れないって事でしょう?茨遠お兄様が死んじゃって、音院御姉様が、死んじゃったら・・私、一人だよ!光に誰も、導いてくれないのっ?」

少女は、茨遠の洋服を握った。
茨遠は、少女の頭をなでる。
だけれど、答えは・・

「ぼくはいかなければいけないんだ。音院より、風雪より、」
「駄目!茨遠お兄様・・・っねえ、茨遠お兄様!」

茨遠はいこうとする。

「いってしまうの?そして、斑羅(まだら)お姉様や、久遠(くおん)お兄様のように、死んで行くの?」

少女は、くぎって、またいった。

「そして・・・皆を悲しませるの・・?解ってるよ?本当は怖いんだって・・生きたいんだって事ぐらい。
でも、魔物と戦って、茨遠お兄様が死ぬのは嫌なの!!・・・・もう、悲しみたくない。嫌なのぉ」

少女は、そういって、倒れた。

「茨遠(しおん)・・・お兄様も、死んでしまうの?消えてしまうの?二人のように!!」

茨遠はくびを横に振る。

「死なないよ、風雪」

茨遠は、少女の頭をなでる。

「お兄様!魔物じゃない!人間が来るよ!」

茨遠は驚く。

「えっ?」

少女はいった。

「きっと、お兄様を殺すきだわ!茨遠お兄様、こっちへ、隠れて!」

茨遠を連れて行こうとする。

  ガチャンッ

そこに、人が入ってきた。

「お兄様!茨遠お兄様!」

少女は、引っ張る。

 ザンッ

「風雪!?」

少女は、茨遠の前に出た。

「馬鹿!風雪!」

風雪は、目覚めない。
そう、そして、茨遠は、そのものと戦った。
もう、音院もいない。風雪もいない。

「どうして・・・・魔物じゃなくて・・人間って・・どういう事なんだよ!」






























『お兄様!茨遠お兄様!こっち、こっちだよ』

少女の声。
茨遠はいく。

『どこだ?風雪』
『こっち、こっちだよ、茨遠お兄様』

少女は笑う。

『待て!危ない!』

悪夢が繰り返されて。
少女は、また死ぬ。
茨遠の心は、病んでゆく。

『立ち直って!じゃないと、嫌だよ。茨遠お兄様』

少女の声。
茨遠は頷く。

「・・なんで、お前が死ぬんだよ。風雪」

偽り。
風雪が死んでしまうなんて。
あの人間達は、茨遠の知り合い。
なのに、親しい関係だったのに・・
偽っていただなんて。

「お前を、巻き込みたくなかった。風雪」

少年は悔やむ。
だけれども、それはどうにもならない。
偽り。
信頼を裏切られて。
許せない気持ちでいっぱいで。
風雪。
お前が何故、死ぬ必要があった?
茨遠の心の中で渦巻く気持ち。
かなしき気持ち。
でも、寂しさに負けないで。
まけぬように生きて―――――――。
貴方は、強いのだから。
ほら、がんばって。
立ち上がって。
勇気を出して。
寂しさに負けぬよう。
思い出を背負って。
がんばれ。
小さな、小さな、勇者となるもの。

「・・・・お前の分も、ちゃんといきるよ、風雪」

茨遠は14歳。(次男)3
風雪は7歳。(三女)5
音院は10歳。(次女)4
斑羅は22歳。(長女)1
久遠は17歳。(長男)2
生き残りは、茨遠だけ。
だから、兄弟の分まで、がんばって・・
ほら、4人分、生きて。
新たな、生命を得て、貴方は立ち上がる。
・・・勇者は、そうなんだよ。
悔しい時、悲しい時、沢山ないて・・
そのあと、ちゃんとがんばれるように。
がんばって。
強いんだから。

「生きなくちゃ――――」











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